自己肯定感の解説

引用元

http://www.nhk.or.jp/sukusuku/p2019/804.html

立花良之(国立成育医療研究センター こころの診療部 乳幼児メンタルヘルス診療科 /児童精神科医

体罰が親子関係を揺るがしてしまうことが問題」

子どもが体罰を受ける中で「自分は親から愛されていない」「親は自分のことを大切にしてくれない」という思いを抱くようになってしまった場合、子どもが基本的な安心感を持ちづらくなることがあります。子どもが健やかに成長する上で欠かせないのが『安心感』です。これは、親からの愛情が子どもに伝わることで得られますが、体罰によって伝わりにくくなってしまいます。

また、体罰によって他の人に対する攻撃性が増したり、情緒が不安定になったりすることもあります。中には、自尊心が低下してしまい、「自分なんかいなきゃいいんだ」と、幼い子どもでも死にたい気持ちが強くなるようなケースもあります。

体罰の影響を考えるとき、子どもがどう感じるかという視点に立つことが最も重要です。

 

玉井邦夫大正大学 心理社会学部 臨床心理学科 教授/臨床心理学)

当たり前のことですが、体罰は苦痛です。苦痛なことは誰だって避けたい。大人は、「こんなに痛い目を見るのだから、もうやめなさい」という理屈ですが、罰の怖さというのは、「それはダメだ」ということしか伝えないことです。それでは、「これからどうすればいいのか」は伝わりません。
罰だけを与えられた子どもは、罰を避けることだけを考えるようになります。そして、「愛されたい」「認められたい」という方向にいくのに、どう動いていいかわからないという状態に追いやられていきます。これは、子どもが生きていくうえでとても苦しい状態です。
体罰によって低くなってしまった自己肯定感は回復しますが、そのためには「よい経験」をたくさんする必要があります。でも、「回復するのだからいくらたたいても大丈夫」という免罪符ではないということはしっかりと押さえておかなければなりません。

まずは、それをしては「ダメ」というメッセージだけではなく、何をすると「OK」なのかをしっかり伝えることです。子どもに、これは「OK」という選択肢をどれだけつくってあげられるかということを考えることが大切です。
友達をたたいてしまったときには、「たたいたらダメ」と言うだけではなく、「お友達にこうしてあげればよかったね」と一緒に考えてあげることが必要だと思います。

 

大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学

もっと子育ての『き・そ』を考えたいと思います。
『き』は記憶について。今回は「子どもに手をあげてしまう」ことが大きなテーマでしたが、実は私も子どもをたたいてしまったことがあります。長女が3歳のとき、子どもは何も悪くないのに私に余裕がなく、たたいてしまった。疲れていました。そのときの手の痛みこの記憶を忘れずにいくことが大切だと思います。
もう一つは『そ』、想像。例えば、子どもをたたいてしまったとき、子どもは「どんな気持ちで自分を見ているだろうか」と想像し、「なぜ聞き分けがなかったのだろうか」と考える。これが子育ての記憶と想像、『き・そ』です。